7月28日:碓氷峠を乗り越えて。

走行距離:129km
ルート:富岡〜横川〜碓氷峠〜小諸〜三才山トンネル〜安曇野
宿泊:安曇野ユースホステル


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野宿 朝5時過ぎ、朝日がまぶしくて目が覚める。テントも張らず、本当の屋外で寝ていたからなぁ。もう朝か。ノロノロと撤収の準備をし、6時頃出発する。

 左の写真は昨夜の寝床の様子。こんなところで寝ていたのだ…。

 横川に向けてジワジワと登りが始まる。今日の最大の山場は碓氷峠だ。以前軽井沢から横川に向かって下ったことはあったが、今回は反対にキリキリと登り続けなければならない。はたしてどれほどの勾配だろうか。手押しだけはしたくないものだが…。

 午前7時半頃、横川に到着。おぎのやのドライブインで朝食でも食べるか…やっぱり定番の釜飯でしょう、と思ったが、先ほどコンビニで腹ごしらえをしてしまったのでどうも釜飯という感じでもない。あんまり食べ過ぎて満腹になって、登坂で気持ち悪くなりでもしたら大変だ。結局なめこ汁とダンゴだけで済ませてしまった。

 さあ、登坂開始!行くぞぅ!やるぞぅ!鉄道文化むらの横を通り過ぎ、勇躍碓氷峠に挑みかかる。ここは184箇所のカーブがあるという。いろは坂以上のカーブの連続だ。いくぞ、こえるぞ、進め国道18号。

 国道18号の沿道にはカーブの番号を表示した標識が立っており、峠を登るにつれこの数字が増えていくという。フムフム、自分がどのあたりまで来たのか目安になるというわけだな…。で、標識を見つけた。「C=6」とある。道のすぐ下には旧信越本線のトンネル跡が見える。え、もう6つ目のカーブ?そんなにたくさんカーブあったっけ?

 その後も意外なほど短い間隔で「C=7」「C=8」「C=9」「C=10」などと、次々に標識が登場する。登る前のイメージとはまったくちがう。もっとこう急な切り返しだけをカウントするのかと思っていた。日光いろは坂のような標識を想像していたのだ。

 みるみるうちにカーブの数字は増えていき、これは意外と楽勝かもしれん!?スピードも時速13〜14キロ程度をキープできており、決してラクとはいえないが、しかしさほど苦しくもなく、呼吸が乱れることもない。メッセンジャーをやっているおかげなのか、それとも峠の勾配が緩いからなのか。とにかく事前の想像よりもはるかにラクに登れるのだった。
めがね橋
 途中旧信越本線の遺構の目玉でもある「めがね橋」の下にさしかかる。うむうむ、これは前回の訪問のときにも見たぞ。

 めがね橋の上は遊歩道になって登ることができるのだが、今回は見送ることにした。引き続き登坂を続ける。

 いったいいつになったら苦しい坂に変わるのか。全身警戒感を漂わせ、ジワジワと峠を登り続ける。


碓氷峠最終カーブ ところが登っても登ってもいっこうに勾配がきつくなる気配がない。スピードはずーーーーっと時速13〜14キロをキープできていた。いったいこれはどうしたことか?最後までこの勢いで登ることができるのか?本当か?本当だとしたらかなり嬉しいが…。半信半疑のままジワジワと登っていく…。

 そして9時15分頃、カーブの数を示す標識が「C=184」となったところで、本当に碓氷峠の登坂を終えてしまった。なんだ、本当に意外とあっけなかったなぁ〜。所要時間は1時間少しというところだろうか?

 碓氷峠から10分足らずで軽井沢に到着。拍子抜けするほどの順調さだった。顔が苦痛に歪むほどのきつい坂はなかった。碓氷峠は…あの184箇所のカーブのおかげで標高のわりに勾配が緩かったのだろう。しまなみ海道の橋脚を登るためのスロープと同じ理屈だ。

 さて、これからどうするか…ここから目的地の大町までは一直線に伸びている道路はなく、いくつかのルート候補があった。旅行前の有力候補は青木峠もしくは聖高原経由、つまり軽井沢から小諸まで走り、その後は北西を目指すというルートだ。

 しかし碓氷峠が意外とラクだったとはいえ、この後さらに何本も峠を越えたり、山あいのアップダウンをこらえながら走ったりするイメージが湧かなかった。いくらなんでもそれでは負荷がかかりすぎだろう…。距離だってそれなりにあるし、それなりにこっちは消耗しているのだ…。なんちゃってチャリダーにとっては実際の体力がどうのというよりも、走れそうなイメージが湧くかどうかという心理的な要因が決定的に重要なのだ。そしてこのときは、走れるイメージが湧かなかった。イメージが湧かない以上は体力が追いつくわけがない。

 軽井沢の駅前広場でツーリングマップルを広げてウームと考える。他にいいルートはないものか。とりあえず今夜の宿は大町ではなく、安曇野に設定することにした。そんなに慌てて大町まで行くこともあるまい。少し脚を余していくことにしよう。

 そして旅行前には想定していなかった「三才山(みさやま)トンネル」を通ることにした。直接北西を向いて走るのではなく、まず直線的に西に走り、山脈を越えてから北上するというルートだ。距離的にはやや長くなるが、日数にはまだゆとりがある。ラクな方を選ぼうではないか。トンネルの中の様子が分からないのは不安だったが…。

 軽井沢から小諸にかけては途中から国道を北に外れる。国道は交通量(しかもトラック、ダンプ)が多いくせに路肩が狭く、走りにくいことこの上なかったからだ。地方道80号を使って小諸市内まで一気に走る。


 小諸市内のすき家で昼飯を食べ、引き続き西に向かって進撃し、途中で地方道81号に乗って南下し、国道152号、254号と走りつないでいく。いよいよ三才山トンネルに向けての、今日2本目の峠越えだ。気温はますます上がり、この坂結構しんどいなぁ〜碓氷峠よりもしんどい。

 午後1時頃、沿道の売店で休憩する。タオルをトイレの水道で濡らし、ペットボトルの飲料を補給し、かき氷を購入する。売店の中にあるイスとテーブルを使わせてもらい、売店のオヤジさんと世間話。今何の仕事をしているのだという、定職に就いていない者にとってはいちばん答えづらい質問を例によってされるが、今は幸いたまたまメッセンジャーだ。だからメッセンジャーをやっていますと答えた。するとそれはきっと都会でしかできない仕事だろうと言われた。その通り。ある程度以上の密度でオフィスが固まっていないと成り立たない商売であるにちがいない。

 三才山トンネルに向かって進撃再開。勾配はどんどんきつくなっていき、いちばん暑い時間帯でもある。うう〜ここまでの登りとは全然ちがう!これぞまさしく「顔が苦痛に歪むほどの峠越え」である。うう〜きつい、しんどい。たまらずギアをアウターからミドルに落とし、時速10キロ前後の低速モードでじわじわと登り続ける。

三才山料金所 おお、前方に料金所らしきものが見える。もう少しか?もう少しでトンネルか??なかなか大きくならない料金所だったが、どうにかこうにかその手前のトイレ付の駐車スペースにたどりつく。かなり消耗した。クタクタのゼーゼーハーハーだ。今の峠に比べれば、ふだん東京でひーひー言っている九段坂や六本木の坂など大したことないではないか。

 体力を消耗し、集中力を欠いたまま全長2.5キロに及ぶトンネルに挑むのは危険きわまりないので、しばらくこの駐車スペースで休憩することにした。タオルを濡らし直し、体を拭き、顔を洗い、頭から水をかぶり、水を飲む。水分水分水分…とにかくこの暑さの中ではジャブジャブと水をかぶりたかった。本当言うなら水風呂の中に飛び込みたい気分だった。

 息を整え、頭を冷やし、そろそろ行くか。料金所まで自転車を押していき、軽車両の通行量50円を支払う。料金所の係員にトンネル内の様子をきいてみるが、中は歩道があるものの、あまり幅はなく、路肩もほとんどないという…。憂鬱だ…。

三才山トンネル 前後のライトを点灯し、クルマが切れるのを待ってトンネル内に突入する。歩道は自転車など通れそうにない狭さだった。車道を突っ走るしかない。チンタラ走る峠越えモードではない。時間に追われて走る「メッセンジャーモード」だ!急げ!急げ!いそげ〜〜!

 高速ギアを入れ、立ちこぎでペダルをフル回転させる。通り過ぎる対向車がおっかない。しかしもっとおっかないのは後ろから追い越して来るであろうクルマだ。特にトラックだ。

 トンネル内は排気音やクルマの走行音が絶えずブァーーーン、グォオオオーンと反響しており、これがまたトンネルの恐怖をあおっているのだった。そのようなブァーーーンという音のうち後ろから追いついてくるクルマはほんの一部だったが、それでも怖いものは怖い。

 そしてより大きなブァーーーーンという音が背後から近づいてくるのが分かった。後ろを向くと、はたして同じ方向に進むダンプカーであった。その後にも何台か続いているようだった。とうとう追いつかれるのか。退避!退避!たいひ〜〜!!非常電話が設置されている、車道からヘコんだところにある退避スペースに逃げ込む。そして間もなくクルマが大音響を立てて横を追い抜かしていった。

 退避スペースから首を伸ばして後方確認をし、再びメッセンジャーモードで走り始める。追いつかれる前にトンネルを抜け出せ!しかしまたまた追いつかれるのだった。今度は退避スペースがないので横を追い抜いてもらうしかない。ウワワワワーおっかねー。

 時間にすればほんの10分足らずのはずだが、トンネル内の10分はあまりにも長い。三才山トンネルを抜けたときには安堵のため息がもれるのだった。いやぁよかったよかった。これでかなり旅程が楽になった。昨日、準備に手間取って出遅れた分はもう十分に取り戻せただろう。ライトを消灯し、トンネル後のダウンヒルを楽しむ…がしかしちょーっと勾配がきつすぎる。8%というのはちょっと急すぎるな…。楽しむというよりスピードをコントロールする方に神経を使った。

 三才山トンネルに次いで松本トンネルもまた全長2キロ以上の長いトンネルだったが、こちらはあまり走るクルマもおらず、ほとんどクルマに追い抜かれることなく突破することができた。国道19号に降り立ち、長野自動車道沿いの一般道などを使ってゆるゆると北上する。もう急ぐ必要もないだろう。


安曇野ユースホステル まったりモードで4時15分、安曇野ユースホステルに到着した。ああ、風呂入ろう、風呂。昨夜は野宿で風呂入っていないし。

 ユースには毎年ここに来ているのだという親子連れ(子供の方はもう高3だとのことで談話室で勉強していた)、大阪の寝屋川から来たという美術館めぐりの一人旅の女性、そして奈良から来たというリタイア男性、そして中年ライダー男性がいた。7月の平日…まだ観光シーズンではないということだろうか。

 奈良のリタイア男性はその昔若い頃に、まだできたばかりの黒部ダムまで遊びに行き、まだ観光地化などされていない頃の「トロッコ」に乗せてもらってアルペンルートのトンネルを抜け、現地でそこらへんで湧いていた温泉に入ったという。すげーなー。できたばかりの黒部ダムですよ!?そして今またこうしてあちこち旅行しまくっているという。若い頃からそうやってあちこち出かけてきた人は、リタイアしてもやることには事欠かないのであろう。

 夕飯や洗濯、GPS用の充電池の充電などを済ませ、9時半頃にはもう眠り込んでしまった。暑くてたまらんので、掛け布団はいらない。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
先輩が、結婚することになった。
7月27日 熱暑の中、やる気のない出発。
117km
高田川の親水公園
7月28日 碓氷峠を乗り越えて。
129km
安曇野ユースホステル
7月29日 黒部ダムを見に行こう。
63km
「森のくらしの郷」ツリーハウス
7月30日 そして感動の結婚式。
7km
「森のくらしの郷」小屋
7月31日 ツリークライミング初体験。
44km
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あとがき 胸に去来するもの。


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