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7時起床。朝食。しばらくダラダラする。ユースの水道で、思いっきり冷たい水を、持参のボトルと昨日飲んだペットボトルの空きボトルに詰め込む。すでに同室だったロードレーサー氏と某県庁氏は先発していった。ロードレーサー氏は乗鞍ユースに連泊して、このあたりを走り回るそうだ。彼は何度もこのへんを走っているそうで、事前に峠の情報を聞けたのはありがたかった。
ツーリングマップルに代わって、昭文社の山と高原地図「乗鞍高原」をフロントバッグのホルダーに出す。細かい地図で自分の現在位置をまめに確認しないと、頂上にはいつ着くのかがまるで分からず、モチベーションの維持に重大な支障をきたすのが「なんちゃってチャリダー」なのだった。
そしてオレもいよいよ今回の旅行のメインの乗鞍越えだ〜!9時20分、出撃。僕と同じく高山に向かうという県庁氏は上で待っていると言っていたが、追いつけるかなぁ。
ユースのある脇道を下り、観光街のはずれ、ホテル深山の前からいよいよスタートだ。今日はまず20キロほどかけておよそ1200メートルを登ることになる。平均6%の坂か・・・。
走り始めてしばらくは、ごくふつうの峠の勾配だ。アスファルトではなくコンクリむき出しの斜面がちょっときつかったがそれもごく短い区間。フロントギアはミドルのまま登ることが出来たし、巡航速度も時速10キロをキープしている。よしよし。といっても、普通にしんどけれど…。それにしても暑いなぁちくしょう。
10時5分、三本滝駐車場に到着。ここまでは一般乗用車も入れるが、ここより上の区間のエコーラインは許可を受けた車両や観光バスしか登ることができない。このとき小雨が降ってきた。しかし登坂で暑かったので、この雨はどちらかというとありがたかった。カッパを着ることなく、身体の熱を冷ましつつ登ることにした。三本滝駐車場では、マウンテンバイクを車から取り出し、登坂に挑もうとしている人たちが何組かいた。
フロントギアをインナーに落とし、ゆっくりと登っていく。巡航速度は10キロを維持できなくなってきた。息があがれば休憩をするが、手押しはしない。いちおう畳平までは休憩を入れて4時間を見ている。約20キロを4時間・・・。乗鞍のヒルクライムレースでは、みな1時間台で登るという。うーむ。
三本滝から登場した2台のマウンテンバイクとほぼ同じペースで登るが、休憩を入れているときに追い抜かれ、向こうが休憩しているときにこちらが抜く、のくりかえしだった。しかし途中で引き離され、その後彼らの姿を見ることはなかった。
幸いにしてマイカー規制のおかげでほとんど車は通らない。たまに通る観光バスも、エンジンがエコなやつなので、通常のバスのようなクサイ排気ガスをがぼがぼ吐き出したりはしないのである。
やがて本格的にしんどくなってきた・・・ギアの歯数にだんだん余裕がなくなってくる。もう少しで軽いギアを使い切ってしまう・・・そして11時、ようやく冷泉小屋にたどりつく。温泉と同じ成分だが温度は冷水そのものの小さな滝が流れており、その道路の向かいに小屋があるのだ。小屋そのものは閉まっていたが…。
その冷泉で顔を洗い、休んでいたら、上からロードレーサー氏が下りてきた。なんとすでに畳平まで到達し、その帰りで、今日はこの後白骨(しらほね)温泉に行くという。そして軽快に坂を下っていった。僕は水とカロリーメイトで補給タイム。
20分ほどの休憩を終え、登坂再開。ここからが苦難の道のりだった。もはやスピードは時速6、7キロを維持できるかどうかというところまで落ちこんでいた。あと少し、あと少しと自分に言い聞かせはするが、いっこうにペダルは回らない。冷泉小屋の後のつづら折りを登り、位ヶ原山荘ににたどりつく(ここも閉まっていた)。
さて、地図で見るとコースのかなりの部分を消化したようだ。しかし先は遠い。まだ遠い。遠い・・・・。そして休憩を入れても息があがりっぱなしで、まったく回復の見込みがないのには驚いた。止まっていてもハァハァ、自転車をこぐとすぐにグハァグハァ。空気自体が薄くなっているらしく、いくら息を吸っても吸っても吸いたりない。いったいどうすりゃえーんだ!?もはやメーターの時速を見るのもイヤになった。タマらない絶望感に襲われてきた。今日は登って終わりではなく、高山まで走らなくては行けないというのに。今日はまだ20キロも走っていない。
12時35分、大雪渓下のバス停「肩の小屋口」にたどりつく。北斜面だからなのか、夏でも雪が解けずに残っている一帯があり、そこではスキーをしている人たちがいた。
とっくに森林などは消え去っており、かなり見晴らしがよいので坂の上の上の方まで見通すことが出来る。しかしそれはそれでツライことだった。まだあんなにありやがる。。。あいかわらず息はあがりっぱなしだったが、キリキリと登坂を続ける。ここまでちょっとした下りもない、完全なる登り一辺倒だというのにもすっかりまいった。脚を休めようと思ったら、止まるしかないのだ…。
てっぺんまであと少しというところで、ランドナーが4機、荷物満載で下ってきた。前後計4つのサイドバッグに、あれはテントであろうか?巨大な包みをリアキャリアに載せていた。あの装備でここまで登ってきたというのか!?すれちがいざまに、お互いあいさつをかわす。
そして1時、ようやくてっぺんの畳平に到着する。着いてしまったよとうとう。前方を見ると、県庁氏が手を振っているのが見えた。こっちも手を振り返すが力が入らない。本当に4時間近くもかかってしまうとは。けれど手押しを一度もすることがなかったのはうれしかった。とはいうものの、到達したうれしさよりも、もう登らなくてもいいのだという安堵感のほうが大きかった。峠を愉しむレベルまでは、遠い。
県庁氏は11時には着いていたというので、すっかりヒマしていたことだろう。お互い写真を撮り、県庁氏はこれから高山に下る。僕はすぐそこにそびえている富士見岳に登ることにした。お互い携帯電話の番号を交換し、あとで高山で合流することになった。
それにしても寒いっ。冷たい風がピューピューと吹きさらしだ。化繊の上下1枚だけではとてもやってられない。ここでようやくカッパを取り出し、上下に着込んで富士見岳を登る。息が苦しいのはあいかわらずだ。ぜぇぜぇはぁはぁ。何度も膝に手をついて休みながら、頂上を目指す。30分近くかけて、ようやく登頂。ふぅふぅ〜。
山を下り、レストハウスで補給をする。山菜うどん、五平餅、ぜんざい。もうちょっとちゃんとした定食ものを食べたかったが、定食屋はもう閉まっていた。登頂前に食べておくんだった。。。
たっぷり2時半まで休んだ後、いよいよ超高速ダウンヒル!手袋を指なしから指ありのものに変え、カッパは着込んだままだ。そして猛烈なスピードで下っていく。何キロ出ているのかとメーターを見ると、反応していなかった…。壊れたのか?センサーの位置がずれたのか?自転車を止めて調整するが、時速20キロほどまでは感知してくれるのにそれ以上になるとスピードがゼロになってしまう。仕方ないので放置しておくことに。
そのとき1台のクロスバイクが登ってきて、「この先まだ長いんですかー?」ときかれた。見るとすでにかなりヘトヘトの様子。「あと1つだけ10%の登りがあってそれを越えればチョットですよ!」と答えると、安堵と絶望の入り交じった表情になった。気持ちは分かるぞ青年。
その後も10%の下りを何カ所も越え、かっとばしていく。推定時速40キロを越えると、耳に鳴り響く風切り音が低くこもったようなかんじになる。今回もそのとおりになった。きっと60キロくらいは出ていたのではないか?メーターの不調が悔やまれる。けっきょく1台の車にも抜かれることなく下る。
3時に、早くも平湯に到着。このまま高山まで突っ走らなければならないが、下り基調のためにおそらく楽勝だろう。下界に下ると暑いので、カッパを脱いで片づけた。ああ、暑い。さっきまで寒さにふるえていたのが信じられない。
国道158号を猛烈に飛ばしていくが、 なんと、ここですさまじい夕立に見舞われた!雨がパラついたかと思うと、あっというまの土砂降り。ヘルメットに大粒の雨が当たる音が響き、ヘルメットのひさしからボタボタボタと絶え間なく雨がしたたり落ちる。しかも、ゴロゴロ雷まで鳴り出す始末。なんてこったい。雷に打たれちゃったりってことがあるのだろうか。うすら寒さを感じた。しかし沿道には雨宿りをできる場所などない。ひたすらペダルを猛烈に回転させるほかなかった。カッパを再び着込む機会も逃し、このままずぶぬれで走ることにした。
あと数キロで高山市街というところで、たまらず屋根付きのバス停に駆け込み、カロリーメイトと水を補給。うーむ。時間は4時15分だが、空は暗い。そして雨ですでにパンツまでビショビショだ。服を着たままプールに飛び込んだのと変わらない状態である。うーむ。
しかし雨がやむ気配がないので、かまわず突進することにした。雨はいよいよ激しくなるばかりだった。うう。雨に打たれつつ、車の水しぶきを浴びつつ、黙々とペダルをこぐ。
その雨も、高山市街に入る頃にはだいぶやんできた。そして5時、ようやくひだ高山天照寺ユースホステルに到着。お堂の軒下に自転車を置かせてもらい、自転車を持参のぞうきんで拭き、濡れた防水カバー、靴などを干した。これは一晩じゃ乾かないぞ…。
→そして高山の夜(別ウィンドウで開きます)
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