9月23日:岩手山に励まされ。

走行距離:121km
ルート :遠野〜盛岡〜八幡平
宿 泊 :八幡平ユースホステル


 7時起床。朝飯を素早く食べる。ユースのみんなの見送りを受け、8時出発!今日は一気に八幡平まで走る。
 八幡平に入ってからは登坂が続くので、早いうちにふもとまで着いておきたい。それにしても、楽しかったぞ遠野ユース。またここには来るだろうなあ。ちなみに、自転車旅行中に同じ宿に何泊かするのは遠野ユースが初めてのことだった。

 国道283号、続いて国道396号を爆走する。よく晴れた自転車日和だ。途中「千葉家の曲り家」の前を走るが、遠くから写真を撮るだけにしておいた。先を急ぐ。しかし、巨岩の上に別の巨岩が絶妙なバランスで乗っかっている「続き石」は、自転車を降りて見に行くことにした。う〜む、たしかに上の巨岩は下の巨岩と、一点で接しているのみである。う〜む、摩訶不思議だ。

 9時、進撃再開。花巻を通らず、遠野と盛岡を直接結んでいる旧釜石街道、ほとんど車も通らず、またそれほど強烈な登坂もない。細かいアップダウンはあるものの、おおむね快調に走ることが出来た。ぐいぐい距離を伸ばしていく。今回は野宿をしないと決めているので、テントや寝袋がない分だけ荷物も軽く、スピードが出る。そして12時、早くも盛岡市中心部に到着。すでにこの日の走行距離は70kmを超えた。午前中だけでこれだけ走るのは新記録だ。

 ここで盛岡市内を徐行しながら、盛岡名物「じゃじゃ麺」の店を探す。そして見つけましたその名もズバリ「盛岡じゃじゃ麺」。赤レンガの岩手銀行の近くにある。辛みそと麺をニチョニチョとまぜ、もぐもぐはぐはぐ。うーむ、うまい…。麺を食べた後はとき卵と残った辛みそを混ぜて、特製スープの出来上がり。ずず〜〜と飲み込む。これもうまい…。うむ、ここでも名物料理にありつけて、大満足だぞ。

 国道282号、陸羽街道を北上開始。残り50km、ここからが勝負。はるか左前方には、岩手山がそびえたっている。バランスの取れた、秀麗な山だ。だんだん大きくなる岩手山を励みに北上を続ける。午前中走った旧釜石街道と違って、こちらは全般に登り基調の街道だった。まあ、いずれは八幡平を登らないといけないのだから、遠くからジワジワ高度を稼ぐにこしたことはない。

 3時頃、岩手山がだいぶ大きくなったところで、地方道23号へ入る。ラスト20km、いよいよ登坂か〜?しかしさほど勾配がきつくない。このまま登れればいいなあと思っていたが、10kmほど走り、東八幡平を過ぎたところで激坂の出現だ!午後4時、本当の山岳戦の火ぶたが切って落とされた。

 東八幡平から岩手県・秋田県の境の見返峠を超え、秋田県の鹿角市に下っていく通称アスピーテライン。今日の宿泊予定地はこのアスピーテラインの岩手側の登りの途中にある八幡平ユースホステル。ラスト10km。そしてこの10kmが長く険しいのだった…。

 ギアを徐々に軽くしていく。つづら折りの登坂道路、幸い自動車はあまり通らないので、好きなライン取りでコーナーを曲がっていく。このコーナーを終われば、そして次のコーナーを終われば…の繰り返しで徐々に高度を稼いでいく。

 毎度ながら登坂は苦しい苦しい。しかし、横に見える岩手山が、オレのことを励ましてくれる。時間の経過につれ陽かげんによってその表情を変える岩手山が見守ってくれなければ、きっとペダルを踏むことをあきらめ、トボトボ手押しをするはめになっていたことだろう。ありがとう岩手山。
 やがて積雪防止用のトンネルのようなシェルターが出現する。これがまた長くて先が見えず、絶望感に襲われる。く、ぬぉ〜〜〜〜。あと5km、4km、3km、2km、1km、500m…。

 最後に長大なまっすぐ伸びるシェルターをくぐり抜け、午後5時過ぎ、ようやく八幡平ユースホステルに到着。これで見返峠までの半分を登りきったことになる。今回の3連休の自転車走行は、ここで終わりだ。


<宿にて>

 八幡平ユースホステルは、定員が多く、合宿向けの公営ユースホステルだった。僕に言わせれば「ユースらしくないユースホステル」である。客が少なかったため、ペアレントといろいろ話をする。どうやら彼には、ユースを経営しているのだ!という意識はあまりないようだった(公営委託経営)。

「二段ベッドなんて、掃除するのが面倒だから本当はぶっこわしたい」
「けどユースらしさを残してくれって言われてるから、残してるんだ」
「うちは年末に来るスキー合宿の常連の団体相手にやっている」
ユースの会員お断りにしようかとか、うちの(奥さん)なんか怒っていた」
「昔ながらのユースの会員の中年夫婦なんかが来るけれど、わざわざ泊まってやってるんだ、
 オレたちは昔からの会員なんだぞと、態度がえらそうなのが多い」
談話室でみんなで団らんとか、あんなのはヘン
「うちはそういう場は提供しない。ああいうのは気持ち悪い」
「ペアレントが集まる話し合いなんかで『そもそもユースとは』なんて教育論になるけれど、
 そんな教育論やったって、現実には客なんか来やしないんだよ」
(僕が遠野ユースは居心地がよかった、と言うと)
「遠野の彼なんかはかなり力を入れているし、彼は成功者の一人だろうねー」

 ようやくユースに開眼した僕は、彼のコメントを聞いて初めのうちは不快感を覚えた。こんな、見知らぬ者同士が話せる場って、貴重だろ?と。けれどたしかに一歩引いて彼の話を聞いてみれば、長期的に見れば衰退傾向の中にあるユースホステルの課題を、見事に言い当てているようにも思える。すなわちユースホステルが一部のユースマニアだけの物になっており、広く一般的な支持を得ていないということだ。

 世間的には、ユースでみなで語らい充実感を得るなんて、旅行でそんなことをやる方が珍奇なのだろう。ユースホステルライフの方が、世間一般から見れば異端なのである。寂しいけれどね…。言葉は過度に直截的であるにせよ、八幡平ユースの彼の言い分は、ごくごく当たり前の常識人の発言かもしれない。

 洗濯をし、夕飯を食べ、風呂に入り、地図をパラパラめくり、寝る。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
見どころ満載、観光もしたいではないか。
9月11日 不安のつきない出発。 - ビジネスホテル増花
9月12日 激走国道4号。 136km メイプル仙台ユースホステル
9月13日 続・激走国道4号。 114km 北上川・高舘橋下(テント)
9月14日 君は「炎(ほむら)立つ」を見たか 82km 遠野ユースホステル
  遠野ユースホステルでの一夜。    
9月15日 初の連泊・遠野ポタリング。 75km 遠野ユースホステル
9月16日 さらば遠野。 - -
       
9月22日 また来た遠野。 - 遠野ユースホステル
9月23日 岩手山に励まされ。 121km 八幡平ユースホステル
9月24日 決戦わんこそば。 - -
あとがき 制約された自由の中で。

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