9月15日:初の連泊・遠野ポタリング

走行距離:75km
ルート :遠野
宿 泊 :遠野ユースホステル


 朝6時50分起床。素泊まりで予約したので、朝ご飯は食べずに出かける。

 なお、この日の夜、一件キャンセルが出たので連泊が出来ることになった。遠野はビュン!と通り過ぎるのがもったいない場所。今日は一日中遠野を走り回ろうと思う。午後からは遠野八幡宮で祭りの二日目が始まるので、お昼までに一回八幡宮まで戻ってこよう。

 まずはペアレントさんから遠野郊外、早池峰(はやちね)神社までの道を訊く。どうせ神社まで行くならそのさらに山奥にある「又一の滝」まで行かないと面白くないだろうとのこと。しかし自転車で午前中に往復するのはしんどいだろうと言われた。よしじゃあ午前中に往復してやる。おとなしく市内をのんびりポタリングしていればいいものを、なぜかこう、達成感というか征服感を求めてより遠い目標を定めてしまう。

 本当は遠野から一山越えたところにある滝観洞(ろうかんどう)(←洞窟の奥に滝が流れている)に行きたかったけれど、ここは大きく山を迂回しなければならないので、一日がかりになってしまう。これはまた次回だ。

 7時半出発、曇り模様は相変わらずだが、雨はとりあえず降っていない。黄金に色づいた田んぼの間の道を走り抜ける。涼しくて気持ちがいい。遠くを見ると、山々が霧に包まれていて幻想的なムードを醸し出している。
 途中のガソリンスタンド兼売店でパンと牛乳を購入。朝飯がわりの補給。10kmほど走ったところで登坂開始。と同時に雨が降ってきた。く…。しかし車がほとんど通らないので登坂に集中できるのがありがたい。いくつか小さいアップダウンを繰り返したあと、8時半に早池峰神社に到着。あいにくの雨だが、しとしと降る雨の中ひっそりとしたたたずまいの方が遠野らしいと思った。

 雨の中、さらに山奥まで走るかどうか迷ったが、結局進軍することに。自転車で行けるところまで行ってしまおう。神社以降はさらに急な登り坂。ギアを目一杯軽くするがつらいことこの上なし。自転車乗り入れ可の道路があと100メートルで終わるというところで無念の手押し。この時点で午前10時。

 本当の登山道の手前で自転車を降り、カメラだけを持って又一の滝を目指す。20分ほど山を踏み分け、川の上の岩を渡り、ようやく又一の滝にたどりつく。高さ20メートルほどであろうか、白い瀑布が轟いている。静寂の中に滝の音だけが響く。滝の眺めと水音を独占した後、引き返す。

 再び自転車にまたがって帰路につく。苦労して登った坂を一気に下り、遠野中心部まで爆走する。雨は降ったりやんだり。11時過ぎにはユースに戻っていた。この時点ですでに往復44kmも走ってしまった。東京でいうなら、霞ヶ関〜八王子くらいの距離ですよ。

 11時20分、東北の伝統的家屋である曲がり屋を観光向けにアレンジした「伝承園」へ行く。ここではわら人形づくりなども体験できるのだが、一ヶ所にとどまるよりも、市内をあちこちまわりたかったので、ここでは昼飯を食べるだけにする。そしてまたもひっつみ定食。

 午後は遠野八幡宮で祭礼があるので見物。部落ごとに伝承されている獅子舞やお神楽などが境内のあちらこちらで披露されている。決してエンターテイメントではない、地味で素朴な伝統芸能。観光客に媚びることなく、地道に子孫に伝統芸能を伝えるのが目的だという。伝承とか郷土などとは無縁に生きてきたニュータウンっ子の僕にとっては、うらやましいものだ。

 また神社に設けられた馬場では、流鏑馬(やぶさめ)の演武をやっていた。パッカパッカ走りながら、直垂(ひたたれ)姿の3人の男が3つある的を次々と射抜いていく。的中率は5割ほどというかんじだが、そんなことは抜きで彼らはきっと郷土の英雄なのだろう…。客席からは惜しみのない拍手が送られた。

 祭り見物の後はポタリングの続き。遠野市立博物館。ただ物が陳列してあるそこいらの博物館とは違う。見て触って聴いて読んで、結構楽しめる博物館だった。遠野に伝わる「おしらさま」「神隠し」などといった民話を、このとき初めて知った。その後遠野の民話を採集、記録した民俗学者の柳田国男がかつて宿泊した宿を改装した「昔ばなし村」へ。純和風の木造の宿屋。ああ僕もこういうところで1ヶ月くらいのんびりしたいなぁ。

 とりあえずポイントを押さえた後、ポタリング再開。遠野市内に設定されたサイクリングコースを、ぼんやりと走る。森、田んぼ、石碑、お社。何気ない風景で心やすらぐ。しかし先ほど「神隠し」の話を聴いたので周りの山々がちょっと不気味に見えてしまった。
 たらたら走った後、5時過ぎに前日に引き続き「一力」で、今度は釜飯を食べる。うまい〜〜。

 それにしても、次の目的地のことなど考えず、ぼ〜んやりと走るのがこんなに気持ちのいいものだったとはなあ。これまでの僕の自転車の歴史にまた新たな一ページがくわえられたような気がした。


<宿にて>

 前日に引き続き、ユースはおおいに盛り上がっている。談話室は盛況盛況。
 なお、この日はスペシャルゲストとして、遠野の語り部である正武家(しょうぶけ)ミヤさんがユースに遠野の昔話を語りに来てくれるという。かつて天皇皇后両陛下にも披露したという大ベテランの方。なんていいときに泊まれたのだろうか。もちろん最前列に陣取って話に聞き入る。

 「むかーしむかし、あったずもな」で始まり、「どんとはれ」で終わるいくつかの物語。本気で聞き入ってしまった。悲話ありハッピーエンディングあり。またミヤさんの一番弟子だというユースのペアレントさんの息子さんも何編か披露してくれた。お話の後はみんな一人ずつミヤさんと記念撮影。いやぁ、いい経験させてもらった。

 この日はチャリダーが新たに3人登場。気仙沼からやって来たビアンキのスポルティフの男と、その連れで自転車旅行初体験のマウンテンバイクの男、また、日本縦断を果たし、稚内から輪行&滞在を繰り返し東京に帰る途中の大学生。チャリダー集結である。自転車話に花が咲いた。なんつーかこう、やっぱチャリダーじゃなきゃ分からない話ってあるわけよ。

 それにしてもこの日本縦断の男、愛車はマウンテンバイクなのだが、ハンドルはドロップに改装、タイヤはなんとロードレーサー用に換装してあるのだ。後ろキャリアもサドル固定タイプの小さな物で、ほとんどの荷物はザックに詰めて自ら背負い、坂に出くわしたら頑張ってこがずに基本的に手押しをするという、何か不思議な男だった。でもあくまで日本を縦断したタフガイなのである。うーむ。

 この日もいろんな人とお話をし、にぎやかな夜はあっという間に更けてゆく。夜中1時半、寝る。


次のページへ
前のページへ
自転車旅行トップへ戻る

日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
見どころ満載、観光もしたいではないか。
9月11日 不安のつきない出発。 - ビジネスホテル増花
9月12日 激走国道4号。 136km メイプル仙台ユースホステル
9月13日 続・激走国道4号。 114km 北上川・高舘橋下(テント)
9月14日 君は「炎(ほむら)立つ」を見たか 82km 遠野ユースホステル
  遠野ユースホステルでの一夜。    
9月15日 初の連泊・遠野ポタリング。 75km 遠野ユースホステル
9月16日 さらば遠野。 - -
       
9月22日 また来た遠野。 - 遠野ユースホステル
9月23日 岩手山に励まされ。 121km 八幡平ユースホステル
9月24日 決戦わんこそば。 - -
あとがき 制約された自由の中で。

トップページ自転車旅行に出かけよう自転車に関する私的考察始末記管理人よりメルマガGPS