3月19日:桜島だ、いよいよ。

走行距離:59km
ルート :都城〜桜島
宿 泊 :桜島ユースホステル


 さあ、この日で鹿児島県に入ることになる。いよいよ旅も終盤だ。まずはここまで来れた自分を褒めたたえたい。

 都城市から西に向かって再び国道10号を走り始める。都城はいちおうは盆地ということで、峠越えを覚悟はしていたのだが、延々とゆる〜い登りが続くだけでこれといった難所はない。うーむいったいこの登りはいつ下りに転じるのだろうか?

 などと考えているうちに錦江湾まであと5kmほど、というところまで来てしまった。どうなっているんだ?錦江湾は断崖絶壁だとでもいうのか??
 ……ところが、そのラスト5kmがすごかった。これまでダラダラと稼いできた高度を、一気に下るのである!!超ウルトラヘアピンカーブ&ダウンヒル。スピードが出すぎて危険なことこの上なし。途中、コーナーを切るときに危うくガードレールに激突しそうになった。あぶないあぶない。ブレーキを利かせつつ、そろそろと下っていく。

 そしてようやく、錦江湾にたどりついた。再び海、だ。湾沿いの国道220号をひたすら南に走る。気分最高なシーサイドライン。邪魔するものは、何もない。さぁ、桜島が見えるのはいつだ〜??
 ときおり横を走り抜けるトラックを避けながら南下していると、やがて右前方に、かすみに包まれた桜島がウッスラと見えてきた!おお〜桜島〜ついにやってきたぞ!自然とペダルを回す足も軽くなる。

 桜島と本土は、かつて噴火で溶岩が流れ出したことによって地続きになっている。溶岩の上に敷かれた国道224号を使ってついに桜島上陸。桜島の中心、中岳・南岳の南側を西に向かって突き進む。しかし、この224号、アップダウンがかなり激しい!延々と登りが続くわけではないが、溶岩に合わせて道路が設置されているので、溶岩の地形の起伏がそのまま道路にも反映されるらしい。急な登りと急な下りが交互にやってくる。けっこう苦しい、最後の15kmだった。

 桜島の大部分はもちろん溶岩で覆われており、そのすき間から松がマダラに生えていて、異様な光景を呈している。そして、桜島の中岳・南岳はウッスラと白い噴煙を上げている。灰が降ってくるというほどでもないが、心なしか目がチクチクするのが分かる。

 島をほぼ半周したところで、ユースに到着。うーむ、距離のわりに疲れてしまったなぁ。


<宿にて>

 桜島ユースホステルも、さすが火山のふもと、風呂が温泉になっている。広々とした大浴場で、湯船は鉄サビ色のお湯でたっぷりと満たされている。う〜〜〜〜〜ん、極楽ぅぅぅぅぅぅぅ。風呂に限って言えば、今まで泊まったどのユースよりもいいお風呂だ。嬉しくなって一人で湯船の中を泳いでしまった。今回の旅行中、温泉に入るのはこれで何回目だろうか?

 そしてこの日のユースのメンツとも、えらく盛り上がってしまった!!

 奈良からやってきた高専生18歳N君…18切符プラス、なんとヒッチハイク!ヒッチハイカーって、本当にいるんだなぁ。地名を大書した、A3サイズの落書き帳を見せてもらった。千葉からやってきた18切符大学院生、電車の旅だったはずなのに、なぜか屋久島にまで上陸してきたという。あ、オレもいつか屋久島行きたいなあ。18切符九州周遊の大学4年生、明日の予定はもちろん未定。岡山から来たという特急グリーン車30代男、旅行歴長し。え?グリーン車?…そしてワタクシ、東京からやって来た「なんちゃってチャリダー」現在フリーター23歳。

 みんな一人旅、お互いの旅行トラブル話、エピソード1、エピソード2、エピソード3……それぞれでめちゃくちゃ盛り上がった。こういうときって、みんな「オレはこれこれこぉんなに困ったことあったんだぜぇ!」と言いつつ、顔だけは嬉しそうなのだ。聞く方は聞く方でゲハゲハ大爆笑の連続。もちろん僕も例外ではない。

 平穏無事な旅行よりも、数々の困難にブチ当たったほうが話のネタ的には、はるかに面白いじゃないか。限度はあれど、ネタ集めたもん勝ちだろ?そういう方が含蓄のある旅行だろ?人生だろ?トラブルをも笑い飛ばして楽しめるのは、まさに若者の特権!ユースにはそういうメンツが集まるから愉快痛快極まりない。シラフとは思えないほどにみな熱かった。

 そんな中で一人だけ異彩を放っていたのは特急グリーン車30代男である。おそらくホステラー歴はこの中では最も長いに違いない。そして、最もスマートな旅の仕方を知っているのもこのグリーン車男だった。時間と移動距離、金額を考えた場合、特急やグリーン車も利用可能な地域限定周遊券を使ったほうが絶対に快適な旅が出来る、もっと頭を使えと、しきりに18切符軍団に説いている。そして、昔は自転車にも乗っていたらしく、ラジオは持っていなきゃダメだとか、あれはいるけどこれはないのかそれはいかんだとか、僕にも説教たれてくる。

 誰かがトラブル話をするたびに、それはダメだ、こーしなさいとウルサイの何の。いいじゃん。もはやトラブルそのものをネタとして楽しんでいるんだから!18切符軍団は貧乏旅行を楽しんでいるんだから。みんなはどう思っていたか知らないが、この男だけはオレは好かんかったね。「オレは旅の先輩だぜ、おまえら何もしらねーなぁ」ヅラするなよ。

 しかしまあ、熱い若者たちの異様な熱気は夜中まで続いたのだった。そして、ヒッチハイカー18歳と、18切符大学4年生と、チャリダー23歳(僕)は、結局翌日は指宿(いぶすき)を目指すということになり、誰が指宿に最も早く着くか競走しようということになった。おー、おもしろそーじゃんかよー。こいつは負けられないぜっ!

 話の輪には加わらず、一人でボー然とテレビを見ている男もいた。うむ。きっと彼は、別府ユースで僕がそうだったように、疲れているのだろう。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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