3月18日:ダサいキツネと依怙地のタヌキ。

走行距離:59km
ルート :宮崎〜都城
宿 泊 :都城ユースホステル


 朝、寝坊した。7時に起きて8時に出発するつもりだったのに、目覚めたらすでに9時。あ〜、いきなり出遅れた。この旅はじめての寝坊。うーむ。

 自転車に荷物を積み、いざ出発!今日は、昨日とはうってかわって雲一つない青空が広がる。南国の日差しがまぶしいぜ。もうここはすでに春。

 今日は鹿児島入りに向けて、内陸をショートカットする。宮崎から南は、海沿いの「日南フェニックスロード」がツーリングの名物コースらしいが、今回は鹿児島まで無事に行くのが最優先。これでいいのか?うん、これでいい。

 国道269号を通っていくが、途中都城までは軽い峠越えがあるはず。何せ、都城盆地というくらいだから、きっと山に囲まれているに違いない…と思っていたけれど、沿道のコンビニの店員に訊いてみたら、「都城はそんなに山に囲まれているというかんじはしない」とのことだった。よーしそれなら楽勝!
 案の定、はっきりと峠といえるのは、青井岳だけだった。峠、峠といちいち騒いでいられるかってんだ〜!幸い自動車もあまり通らず、比較的ラクな峠越えだった。

 道の駅山之口でヤギのソフトクリームをペロペロしつつ、初老のご夫婦とお話する。どっから来たのか?東京からです。どうやって来たの?自転車です。え〜!
 …このご夫婦によると、ここから先、都城まではほとんど下りばかりだという。そーかよーし願ったりかなったり。

 さあ、出発するか〜と思って自転車にまたがったちょうどそのとき目の前を、デイバッグを背負い、マウンテンバイクに乗った軽装の日帰りチャリダー風の男が走り去っていった。お?オレも続くぜ。

 猛烈な下りを2台のマウンテンバイクがかっ飛ばしていく。こちらが出遅れたこともあって、かなりの車間距離がある。下りが平坦になったところで、日帰りチャリダーがこちらを振り返り、また前に向き直って猛然とペダルをこぎはじめるのが見えた。お?向こうもこちらを意識している?そうとなりゃあ、絶対負けらんないぜッ!脚に火がついた。

 ズバドドドドドドドドー。時速30km以上で猛然と走る。わずかに向かい風だが、なんのその。少しずつ日帰りチャリダーとの距離が詰まっていく。日帰りチャリダーは安心したのか、片手をダランと下げ、8分目の力でペダルを回しているようだった。そしてとある交差点で、一気に日帰りチャリダーを追い抜いた。バックミラーを見ると、日帰りチャリダーが再び猛然とペダルをこいでくる姿が映っている。こちらも追い抜いた後もスピードは緩めず、全力でこぎ続ける。メーターを見ると時速27km、こんなスピードで平地を走ることはめったにない。でも今は止められないぜっ!

 われわれは道路の左側を走っていたはずなのに、いつのまにか日帰りチャリダーは右側にサイドチェンジをし、すさまじい勢いで「立ちこぎ」をして、こちらを抜きにかかっているのが視界に入った。シブトイ、しぶといなぁ。彼もきっと意地っ張りに違いない。意地っ張りチャリダー2匹は、お互い譲らない。ダサいかもしらんが、我々二人は、何としても譲れない勝負の世界の中にいた。こちらもあらためて力を入れ直し、再び引き離しにかかり、また二人の距離は広がりはじめた。

 道路案内板を頼りに、都城を目指す。目指していたが、僕が走った道は若干遠回りだったようだ。Y字形の交差点で、Yの字のもう片方の道路から、一度追い抜いたはずの日帰りチャリダーが合流し、前方に飛び出したのが見えた。く。ヤツは地元民か?うまいことショートカットしたなぁ。

 道は平坦だが、今度は向かい風が強い。そして日帰りチャリダーも、今度はスピードを緩める気配がない。また、こちらを振り返ってきた。これは負けられないぜ〜。エンドバーを握りしめ、上半身を低くして、風を避けるようにしてコンパクトに本気こぎをする。かたや日帰りチャリダーはこれまた全身の力を振り絞って立ちこぎをする。それでは風の抵抗をもろに受けるぞ…!?

 結局、これが勝負の分かれ目になったのかもしれない。数百メートル走ったところで日帰りチャリダーを抜き返し、さらに数km走ったところで完全に日帰りチャリダーの姿は見えなくなった。はふ〜、こんな、時速25kmオーバーでダウンヒルでもない所を何十分もこぐのは初めてだぞ。しかし、日帰りチャリダーのおかげで、こちらもかなり距離を稼ぐことが出来た。ありがとう、日帰りチャリダー。

 まだ午後3時前、余裕だな。あとはユースに着いて、のんびりするのみ。

 しかし都城の市街地に入ったところで、途中で曲がるべきところを曲がらず、みごとに行きすぎてしまった。あーなんてこった。元来た道を引き返す。すると、、、向こう側から反対車線を、先ほど追い抜いた日帰りチャリダーが走ってくるのが見えるではないか!かなり苦しげな表情。うーむオツカレサマ、そしてありがとうと思ったけれど、ありがとうって言うのもヘンだよなあ…などと考えているうちにすれ違ってしまった。


<宿にて>

 ほどなくたどり着いた都城ユースホステルは、普通の民宿と兼業の宿だった。宿のおばちゃんと世間話。
 日曜は食事ナシというので、外に出かけることにした。焼き鳥、団子、うどん定食をバクバクバク。幹線道路に立つユースで、周りには郊外立地型のショッピングセンター以外、ほとんど何もない。

 ユースに戻るが一人だけ。民宿の客はいるようだけれど、誰も出てこない。うーむ、なんだかなー。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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