3月12日:口角泡を飛ばした夜。

走行距離:93km
ルート :御津〜岡山〜倉敷
宿 泊 :倉敷ユースホステル


 朝、ペアレントさんの奥さんから見送られる。「今日はどこまで?」「倉敷までは行きたいです」「じゃあ、近くはないわね。がんばってね」…というわけで、今日は再びやや長めの走行だ。

 パッキングを済ませ、キャリアに積もうとすると、何と、キャリアを自転車のフレームに固定している2本のうちの1本が外れかけている。ネジを外してみると、ネジ山がつぶれてい た…。これではキャリアがぐらぐらしてしっかりと固定できない。うーむ針金を持ってくるんだったなぁ。迷ったんだよなぁ、持ってくるかどうか。持ってくればよかった。とりあえず、コンパクトに巻いて持ってきていた布テープでキャリアをぐるぐる巻きにして応急措置。荷物を積んで走るのには支障がなさそうだ。

 昨日に引き続き、国道250号を西へ、西へ。揖保川、相生、赤穂、日生と、次々に通り過ぎていく。ただ、これらの集落は境界がすべて峠になっており、一つ町を越えるたびにきつい登坂を経なければならない。しかしその分ダウンヒルのご褒美もたくさんあるというわけで、結局、赤穂までは休憩含めて平均時速18km以上というなかなかのペースで走ることが出来た。

 ちょうど正午、岡山県備前市の伊部というところに着く。ここから電話して倉敷ユースホステルを予約した。ありがたいことにまだ夕飯を作ってもらえるという。よぉし、走るぞ!

 やがて岡山市内に入る。岡山市内ではあちこち道路を掘り返しており、なかなか走りにくかった。岡山市といえば、路面電車などを用いた交通需要マネジメント(TDM)の先進市という印象を抱いていたが、TDMはどうも苦し紛れの一手ではないかという気がする。(このあたり、土木工学の専門用語…どうもアルバイト先の影響で、道路そのものに目がいってしまう)
 それにしても、町なかの普通の大通りを、風俗店の街宣車がスピーカー大音量で走り回っているとは、なんちゅー町なんだ…。

 岡山から倉敷までは、国道2号を避け、並行している県道162号を使って走った。なるべく幹線道路を避ける方向で。

 そして倉敷市。まだ夕方4時。うむ。宿にはこのくらい余裕をもって入りたいものだ。ところがユースホステルが見つからない。地元の人に何度も道を聞きながらたどりついた倉敷ユースは丘の上、お寺の墓の向こう側にあった。ふもとからじゃ、あそこにユースがあるようには見えないものなぁ。

 途中で美観地区という名の、倉敷の蔵づくりの建物を集積して復元した観光ポイントがあったけれど、ほとんど素通りしてしまった。ピカピカに整えられて、それは観光客を呼び込むためには仕方ないんだろうけれど、まあ自転車旅行で訪れるところでもないか、と思ってパス。前日の御津なんかは、結構いい趣だったけれどね。


<宿にて>

 今日は大勢のホステラーさんたちがいるぞ〜!夕飯もにぎやかにみんなで食べ、夕飯の後は談話室で大いに盛りあがり、いやーこれぞまさしくユースホステル!

 世田谷区在住の大学の先生、京都の大学(法学部)に通う女の子、自動車で東京から山口を目指す学生男、18切符旅行の神奈川の大学生、港区の大学生。全員が一人旅で、しかも、僕以外はみんなしっかり倉敷観光しているなー。全員一人旅なので、全員が話の輪にくわわり、それぞれがそれぞれの旅行の話をし、みんなそれに耳を傾ける。なんか話を聴くだけで何倍も旅行できた気分。

 特に大学の先生と京都の法学部生とは、旅以外にも、大学話、教育話で熱く語り合っ てしまった。大学だけ世間から切り離されているのはよくないとは、先生(民間経験者)、京都の法学部生、僕の一致した意見。
 「受験勉強→大学入学」…ここで浪費されるエネルギーは相当なものだ。受験を否定するわけではもちろんないけれど、あまりに入試というものだけが世間とは切り離された特殊な世界になりすぎていて、それってよくないんじゃないの?別に入試に限らず、公務員試験、司法試験、教員試験、医師国家試験……成績さえよければそれでいいんですか?というようなことを話していた。

 法学部だってなあ、判例研究をやって、法解釈だけやっていてもダメなんだぜ!その先の立法政策論まで踏み込まないと、それは大学の中だけで通用する学問になってしまう。実務家になるにあたっては、論理的整合性だけを追究するだけではダメなんじゃん?最高裁の判例でも論理構成は完全だけれど、かんじんの価値判断に大いに疑問ありというものだってあるじゃねえか。…というのは京都の法学部生と僕の意見。

 そういう疑問を学生に持たせなければ、法学部の意味ない!公務員試験、司法試験にうかるための予備校だけが全盛で、試験合格が至上命題とは情けない。ホント、1年公務員試験浪人して考える時間できてよかったですよぉ、というのは僕の意見。

 ちなみに京都の法学部生が通う大学は、1つのコマにいくつもの講座を重複申請することができて、単位もテストさえ受ければ取り放題だという。勉強する気のない人は全然大学に来ないから、授業が私語やケータイで乱されることもないという。完全自由、完全自己責任、ある意味、大学の究極の理想像かもしれない。

 話はあちらへ飛びこちらへ飛び、のどはカラカラに渇き、いつの間にか夜の11時をまわっていた。そろそろ寝ますか。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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