3月8日:転勤族の故郷とは。

走行距離:83km
ルート :近江八幡〜瀬田〜宇治川〜木津川〜精華
宿 泊 :実家


 僕が昨日ユースに着いた後に、オートバイの2人組が飛び込みで着いたらしい。 四国から走ってきた例のチャリダー2人と、そのライダー2人とともに朝食を食べる。ライダー二人組は、昨日は伊豆の修禅寺から一気に近江八幡まで走ってきたという。なんちゅー機動力。

 朝食を食べ終わり、チャリダー二人組は先発していった。続いて僕も出発!今日は京都府最南端の精華町にある実家まで走る。何年も前から周囲に「いつか自転車で実家へ帰る」と公言していたけれど、これでようやく実現できそう。

 幹線道路である国道8号を避け、並行して走っている県道2号を通り、やがて国道1号に合流した。滋賀県の近江盆地は見事に真っ平らで、実に走りやすい。天気も雨が上がり、今日はいけるぞ!?

 琵琶湖最南端から流れ出している宇治川にさしかかったところで、国道1号から外れる。1号沿いに大津→京都と走るルートは東海道走破にはよく使われるようだが、自動車最優先の危険極まりない高速道路状態の峠が滋賀県と京都府の境にあるらしいので、京都市を避けて一気に南下するのだ。

 琵琶湖の南端が徐々に細くなり、その先端部から宇治川は流れ出している。そして宇治川沿いには国道422号、続いて県道3号が伸びている。下流に向かって走るということは、当然これらの道路はほぼ、ダウンヒル。川を眺めながら快適な「川下り」ができるにちがいない…。

 と思っていたらまたもや強烈な向かい風!思ったようにスピードが出ない。しかも信号などまったくない川沿いの道を、ダンプカーが爆走していて気が抜けない。そして、昼過ぎには雪がちらつきはじめた。1時間ほど経つと、ろくに目を開けていられないほどの本格的な雪となってしまった。急いでカッパを着込み、目を細めつつ、実にくたびれる川下りをする。ああつらい、ああさむい。

 天ケ瀬ダムの横を通りすぎ、宇治市街に近づいてきたころようやく雪はやみ、一気にカラリと晴れ上がった!
 実家へのお土産がわりに宇治の草団子を買い、再び走り始める。団子屋のおばちゃんからどこから来たのかと訊かれ、答えると、おおいにほめられてしまった。毎日走っていると、だんだん自転車に乗って100km走るというのが当たり前になってくるけれど、やはりオレは世間的には今とんでもないことをしているらしい。ここは素直に酔っておこう。

 県道15号や国道24号(奈良街道)を使って南下し、木津川までやってきた。もうこのあたりは、僕にとってはどこかで聞いたような地名ばかり。山城大橋からは、木津川の土手に作られたサイクリングロードの上を快走する。向かい風ではあるけれど、市街地を走るよりはるかに気分がいい。

 お?左前方に犬発見。首輪なし。犬か…いやなんだよなぁ。4歳のとき服の背中を引っ張られてからというもの、実に苦手なのだ。
 さてどうしてくれようかと思っていたら「バゥワゥバゥワゥ!」犬がほえながら追いかけてくるではないか!うぉ〜逃げろ逃げろ〜!「本気こぎ」で自転車を走らせる。しばらく走ると犬のほえる声がやんだのでドレ、あきらめたかな…と思ってバックミラーを見 ると、まだぴったり後ろを追いかけてくるではないか!「ウ〜バォワォバォ ワォ!」(注:僕がほえる音)…犬に対してほえかえして、ようやく追い払うことが出来た。ふぅ…。日光旅行のとき以来だ。追いかけられるのは。

 木津川のサイクリングロードを外れ、実家に向かって最後の登り。これで旅も一区切りか。
 実家は僕が東京に出てきて5年目の頃に引っ越してしまったので、ここでいう「実家」を僕はまだ見たことがなかった。住所を頼りにたどりついた実家は、全然知らない、他人の家も同然の一軒家だった。実に2年ぶりの「帰郷」である。

 …この旅行中、旅先で出会ったいろいろな人から「出身はどこなの?」と訊かれた。
 この質問にはいつも困ってしまう。親が転勤族だったこともあり、ここが故郷だと言える場所が僕にはない。埼玉の川口生まれ。2歳まで川口。5歳まで同じ埼玉県内の志木。小学校卒業までは千葉県流山。中学高校は奈良。大学からは東京で一人暮 らし。東京で一旗上げるのだ。
 生まれは埼玉だけれど、最も長く住んだのは流山だし、最もいい場所だったなぁと思うのは奈良、といっても関西人にはなりきれなかった。就職は東京で。

 「地元」という感覚は分からないし、自分の出身がどこなのかも分からない。そんなもんだ。しかもマズいことに、これまで住んだ場所は、どこも「ニュータウン」と呼ばれる統一規格の似たような家が並ぶところ。のっぺらぼうな街ばかり。もう二度とニュータウンなんかに住むものか、といいつつ大都会には住めないし、まして田舎暮らしなど。

 とはいえ、いちおう実家は実家だ。快適な新築の家で、しばしの休息。両親と久々にゆっくりと話をする。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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