3月7日:天からミゾレの関ヶ原。

走行距離:110km
ルート :名古屋〜関ヶ原〜米原〜近江八幡
宿 泊 :近江八幡ユースホステル


 さあ、今日はかなりの距離を走らなければいけない。名古屋から一気に滋賀県の近江八幡まで走りきらなければユースには泊まれない。今日はしんどいぞ。

 名古屋から近畿地方に抜ける主なルートとしては、国道1号沿いに三重県の鈴鹿を通るルートと、岐阜県の関ヶ原を通るルートがある。国道1号はもろに山脈越え(鈴鹿峠) で、まさに自動車のためのルート。一方関ヶ原は地名にも「峠」がつかないし、鉄道が通っているくらいだから、勾配は鈴鹿ほどはきつくないはず。

 日本は明治以降、道路網より鉄道網を優先的に整備してきたので、技術的には近代のアスファルト舗装道路より先に登場した鉄道が通っているルートは、戦後ようやく登場した高速道路しか通っていないルートに比べて、さほど険しくはないと予測できる。

 うんちくはこれぐらいにして、まずは走らなければ。名古屋から10kmほど西に向かい、ほんの10分間ほどの間に、木曽川、揖斐川、長良川を渡る。いわゆる「輪中(わじゅう)」地域。昔、小学校の社会科の授業で習いましたね。

 今日も向かい風が強いなぁ…。3つの川を渡った後、養老山地沿いに国道258号を北上する。やがて大垣まで北に延びる国道258号と、北西寄りに養老山地に沿って伸びる県道56号の分岐点にさしかかった。もちろんここは最短ルートの県道56号を選ぶ。あいかわらず向かい風が強い…。

 たしかこのあたりには、僕が以前から行きたいと思っていた「養老天命反転地」という公園があるのだが、寄り道している時間はなさそうなので、今回はパスすることにした。またも観光名所を逃しているぞ。

 向かい風があまりにきついので(2日前の嫌な記憶が思い出される)、民家の間をすり抜けすり抜け、じわじわと北上していく。スピードが伸びない。

 狭い登り道と、片側一車線規制(何でこんなに工事だらけなんだ?)に苦しみながらも、 ようやく南側から関ヶ原にさしかかった。ここからは再び幹線道路(国道21号)を使わざるをえない。しかし、さすがに古来より畿内と東国の境目となっていた不破関、国道21号も登坂するにつれどんどん道幅が狭くなっていく。
 道自体もさることながら、走っている自動車の8割が大型トラック、ダンプカーの類というのにもまいった。

 どうにもこうにもたまらず、3時頃関ヶ原をほぼ登りきった所にあったレストランに入る。 何やら雲行きが怪しいかんじ。 
 出来立てアツアツじゅうじゅうのハンバーグ定食をたいらげたところで、雨が降り始めた。そして峠を越え、坂が下りに転じたところで、雨がみぞれに変わった。さ、さぶい!ハンドルを握る手が寒さでしびれている。手袋の中にまで冷たい滴がしみ込み、どうしようもない。くそー、せっかくの峠越えの後のダウンヒルのご褒美が、ちっとも楽しくなーい!道が狭い、トラックが多い、路面も濡れて滑りやすい。これじゃスピードも出せない。箱根越えの二の舞ではないか。

 米原まで下りてきた時点ですでに時間は午後4時。まだまだ近江八幡ユースまでは40km近くある。宿に着くのは7時近くになるかもしれないな、、、。
 滋賀県に入ってからは、交通量が多いであろう国道8号を避け、琵琶湖沿岸のさざなみ街道を走ることにした。…ここが素晴らしいサイクリングロード!湖岸沿いに果てしなくサイクリングロードまたは広い歩道が続いているのだ!これはかっ飛ばしていける、と思いきや。

 関ヶ原の下りで降り始めたみぞれが、今度は雪に変わった。湖岸の夕暮れはもちろんふだんは美しいのだろうが、今はただのどんより曇り空。琵琶湖の湖面も、もちろん外海ほどではないにせよ荒れている。あー、せっかくの快走快適ルートが〜。

 彦根を通って南西に飛ばすのだが、彦根といえば彦根城である。僕は以前、民間の街歩きサークルに入っていて、彦根城(美しい平山城です)や城下町の路地裏も歩いたことがあり、機会があればぜひもう一度訪れたいと思っていたのだが、時間も時間だし、この天気で寄り道する元気もなくし、通り過ぎてしまった。雪の中にうっすらと見えるお城を走りながら拝んでオシマイ。また観光ポイントを逃しているぞ?

 近江八幡市に入ったときには、あたりはすっかり暗くなっていた。しかも周りは山と田んぼしかなく、街灯もろくについていない。これでは先が見通せないし、道路案内の看板もよく見えない。時間はすでに6時をまわっている。ユースに連絡を入れていなかったので、今日は飛び込みになってしまうのは仕方なさそうだけれど、飲食店の類がまっ たくないのが気になった。しかし、今は何より宿にたどりつくのが最優先。

 そして7時すぎ、ようやくユースにたどりついた。小学校の木造校舎を改造した、なかなか趣のある建物だ。ここは事前に予約しておけば近江牛のステーキを焼いてくれるのだが、予約も何もしていない僕は、当然のことながらステーキはもちろん夕食自体がない。はぁ、まあたどりつけただけでよしとするか、、、。
 ユースの軒先にはマウンテンバイクが2台止まっている。もしかしてこれはチャリダー?


<宿にて>

 チェックインすると、食堂でその自転車の持ち主が二人して近江牛ステーキを食べているのが見えてしまった。
 けっきょく予約なしで当日突然宿を直接訪れる「飛び込み」で泊まることになったので、夕飯は今日もカロリーメイト。持っててよかったカロリーメイト。さびしい、わびしい。いくらカロリーが足りていても(足りないけれどね)、気分的にあんまりよろしくない。浜名湖に続き、カロリーメイトの夕飯はすでに2度目だ。これからは夕飯の確保にもっと気を配る必要があるな。

 部屋では、表に止めてあった自転車の持ち主2人と同室だった。大学の自転車部に入っており、愛媛県で合宿を終え、しまなみ海道(瀬戸内の尾道〜今治を島づたいに結ぶ道)を通り、 そこから名古屋まで自主的に自転車で戻る途中だという。ということは、山陽道を通ってきたのか。ちょうど僕がこれから行くところじゃないか。これはいろいろと聞いておかねば。今回初めて出会う、モノホンのチャリダー。

 彼らといろいろ話したのだが、僕が今日は名古屋から110km走ってきたという と、「100km超えたんですか〜、すごいですね〜!」と驚かれた。東京からここまで、毎日平均100kmペースで走っていると言うと、「毎日100kmですか?すげー」とよりいっそう驚かれた。そうなのか?100kmは多いのか?

 彼らによると、一日100km以上走ることはもちろん出来るけれど、そうするとアクシデントにあった場合、宿に着くのが遅くなってしまったり、観光する余裕がなくなってしまうのだという。ただひたすら走るだけというわけ。これすなわち、今日までの自分じゃないかよ。なので、最初に計画を立てるときは、80km/日で旅程を組むらしい。うーむ、そうなのか。

 東京を出て今日で5日目。そのうち一日中晴れていたのは2日だけ。そのうち1日は焼津から浜名湖まで、強烈な向かい風に襲われた日。純粋に快走できたのはたったの一日だけだ。
 実はこの時点で、相当に参っていた。このまま本当に鹿児島まで行けるのか?この先だってどんな天気か分からないじゃないか。しかも、ここから先も100km/日計画だぞ?そしてまずいことに、70km過ぎると左膝が痛むというのも相変わらず。計画を練り直さないとダメかもまじで。彼らの話を聞いているうちに、次々と不安材料が出てくる。

 彼らからはいずれ僕が通るであろう山陽道やしまなみ海道の話を聞き、僕は明日彼らが通るであろう関ヶ原の話をした。本物のチャリダーと自転車話をじっくりできたのは今回が初めてだったので、かなり楽しかった。ツーリングマップルは便利だけれど「快適なアップダウン」とか「気持ちのいい峠越え」だとか、やはりオートバイ向けなんだよなぁという ところで意見が一致。

 テレビをつけてみると「モーニング娘。」の中澤裕子の脱退話をやっていた。特にファンというわけではないけれど、「モーニング娘。」の中でも彼女は勤め人の経験もあり、その存在のおかげで安心してグループを見ていられるという面もあったように思う。、、などと、久々に俗世間の話題にふれた夜だった。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日キミは、登りきることができるか。100km箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日土砂降りの雨、一車線の人生。106km焼津セントラルホテル
3月5日東海道しっかりせよ、怒り号。100km浜名湖ユースホステル
3月6日一筋に、一筋に、無敵の男。95km愛知県青年会館ユースホステル
3月7日天からミゾレの関が原。110km近江八幡ユースホステル
3月8日転勤族の故郷とは。83km実家
3月9日作戦変更。実家
3月10日父子伴走。71kmビジネスホテルともえ
3月11日瀬戸内旅情で休んだ。82kmユースホステル浄運寺
3月12日口角泡を飛ばした夜。93km倉敷ユースホステル
3月13日決断のとき。94km瀬戸田ユースホステル
3月14日春のうららの海だわさ。89km松山ユースホステル
3月15日九州上陸作戦。35km別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日ひとり上手と呼ばないで。88km宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日ダサいキツネと依怙地のタヌキ。59km都城ユースホステル
3月19日桜島だ、いよいよ。69km桜島ユースホステル
3月20日ずっこけるな、三人組の大競争。49km圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日佐多岬はるかなり。22km錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日決戦、あばよ、早くー。58kmJR志布志駅待合室
3月23日さらば、さらば。1km大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがきオレの勲章はオレのもの。


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