3月6日:一筋に、一筋に、無敵の男。

走行距離:95km
ルート :浜名湖〜岡崎〜名古屋
宿 泊 :愛知県青年会館ユースホステル


 朝、出発するときに、同じ宿に泊まっていた大学の自転車部の人たちと会った。40名の団体サンとは別 。
 聞くところによると、やはり昨日は風が強い一日で、海沿いの国道150号も内陸の国道1号も、強烈な西風(つまり僕にとっては向かい風)のため、時速10km出せればいいほうだったらしい。やっぱりそうなんかい。けどまあ話のネタ的には悪条件を極めたほうがおもしろかったりする。

 今日こそは爆走するぞ〜。今日は何よりもまず、早く着くことを優先させよう。というわけで一日中、国道1号を走ることに決めた。幹線道路は走っていて面白くないのだが、 まっすぐ都市間をつないでいる場合が多いので、「不快ながらも最短ルート」であることが多い。

 しかし浜名湖に来たのにウナギ丼食いそこねたのは惜しいなあ〜と思っていたら、沿道に定食屋発見!そしてメニューには「うなぎ丼」とあるじゃないか〜やったー。というわけで朝ご飯にうな丼を食べることができた。
 味は……む、まあ、うなぎを食べられたんだからよしとしよう。NHKの朝の連ドラが終わると同時に出発。

 面白みのかけらもない国道1号を、しかし前日とはうってかわって快走快走。
 岡崎近くの定食屋で昼飯。自分で好きな料理の皿を取って精算する方式で、たらふく食べてしまった。そして名古屋のユースに予約の電話を入れる。NHKの連ドラ昼の再放送が終わると同時に出発。なんか、食べて走っての繰り返し。

 安城市に入ったところで、前方に、デイバッグを背負いマウンテンバイクに乗った日帰り風の若い男を発見した。ペダルを見ると、専用の靴をカチっとはめて固定するようになっている。「こいつ、できる…」(ガンダム風の口調で)…さっそく追撃開始〜!
 
 速いのなんの、道路の中のライン取りが素晴らしく、すいすい市街地を走り抜けていく。 彼の後について走るとこちらもすいすい。…けっきょく10km以上、その日帰りチャリダーの後を追って走った。ペース的にもずいぶんと引っ張ってもらい、かなり時間短縮になった。ありがとう、日帰りチャリダー。

 名古屋市内に入る。名古屋市は自転車レーン、時間限定のバス車線など、交通対策に力を入れている。僕が1年間勤めたバイト先が道路計画の会社だったこともあり、このような道路設備には自然と目がいってしまう。写真を何枚か撮り、再び走り始めた。ほどなく名古屋の中心近くの愛知県青年会館ユースホステルに到着。


<宿にて>

  愛知県青年会館は、ユースホステルだけでなく会議室などの役割も果たす総合センタ ーなので、あまりユースというかんじがしない。食堂や談話室もない。だから居場所は自分の部屋だけ。

 この日は3人の相部屋で、一人は大学2年のS君。そしてもう一人がすごかった。定年退職してから10年経つという男性。

「どちらから来られたんですか?」
「いやー、今東海道を歩いている途中なんですよ」(!?)
「京都からは6日間かかりましてねー、東京の日本橋まで行くんですよ」(……)

 正直言って僕はこのときまで、オレの自転車旅行って結構スゴイじゃん?と思っていた。しかし、上には上がいるんだなー。まあ上とか下とかいう問題ではないかもしれないけれど。

 なんでもこのおじさん、日本ウォーキング協会主催のイベ ントの常連で、今は東海道横断イベントの途中だとのこと。イベントそのものは日程は飛び飛びだし、歩く距離も1日20キロほどだというが、このおじさんはイベントのない日も、こういった安い宿を拠点にあちこち自主的に歩き回っているらしい。そして次のおじさんのお話は、僕にも思い当たる節があったので聞き入ってしまった。

「けれど、イベントに来る人たちでも、歩くのを楽しむというより、ただひたすら前に前に進み、距離を延ばすこと自体が目的になっちゃっている人もいるんですよね〜」
「膝をこわして足引きずって来る人もいるんですから…あれじゃ意味ないと思うんですよね〜」
「もっと周りの景色とか見ればいいのになぁ〜」

 これを聞いて僕も反省たっぷりだ。2日目から、走行距離が70kmを越えると左ヒザが痛むのだ。いくら鹿児島までは行きたいったって、身体こわしたんじゃ意味がない。無理に無理を重ねて、それで旅行自体が不可能になったらどうするんだ…??特にヒザは自転車をこぐ上では最も要となる部分。ペダルを回せなかったら自転車自体進まない。

 しかも出発前の目標で「観光もする」などと考えていたのに、ほとんど観光らしきことはしていないじゃないか。箱根も泊まっただけ。静岡県は走っただけ。名古屋だって、疲れ果てて街に出歩く元気をなくしている。

 ここまで1日平均100kmのペースで走ってきたけれど、今の計画だと、この先 120km、130km走らなければいけない日だってある。毎日100kmというのでさえ思ったよりしんどいというのに…。この先やってけるのか?

 ちなみに僕の1日の最高走行距離は約180km。日光まで2日かけて行き、帰りを一気に1日で走ったのが最高記録。ただしこのときは2泊3日の旅行だったし、家に帰ってしまえば旅は終わりだから、存分にこぐことができた。

 さて、今回の旅行はこの先どうしたものか…??おじさんの話を聞き、考えれば考えるほど弱気になっていく僕であった。本当の漢とは、一心不乱に前だけ向いてしゃかりきにいっぱいいっぱいになりながら進む人ではなく、このおじさんのような人を指すのかもしれない。

 夕飯は、同室の2人はもう食べてきたというので、一人で1階の焼き肉レストランに入っ た。昨日の夕飯はカロリーメイトだったので、この日は大いに食べてやろうと思い、焼き肉をどぉおんと注文した。分かってはいたけれど、やはり一人焼き肉は、こげるこげる。こげまくり。そしてムナしい。しかし満腹になってしまえばとりあえず満足なんだな。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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