3月5日:東海道しっかりせよ、怒り号。

走行距離:100km
ルート :焼津〜浜岡〜浜名湖
宿 泊 :浜名湖ユースホステル


 本日は晴天なり。ただし朝からいきなり強烈な、台風のような向かい風。こいでもこいでも自転車が前に進まない。昨日の向かい風よりもはるかにひどい。坂道を下っているはずなのに、自転車が止まってしまう。メーターを見ると、必死にこいでいるときの速度が何とわずか時速10km。

 前日に引き続き、国道150号をひたすら西に走る。予定ではここはアップダウンもほとんどない、快走ルートのはずだった。楽しみにしていたのに。ちくしょう。焦る、焦る。大井川を渡り、榛原町、相良町、浜岡町。浜岡町のショッピングセンターで、向かい風にうちひしがれながらピットイン。昼飯を取る。もう丸一日こいだような疲労だ。しかし旅程は全然。なぜか猛烈に怒りが湧いてくる。ちくしょー、うおぉ。

 大東町、大須賀町、浅羽町、福田町と、引き続き初めて聞く名前の町をじわじわと突破していく。 途中、遠州大砂丘や、日本三大砂丘の一つ、中田島砂丘があったが、海沿いの道に出る元気もなく、ただひたすらこぎ続ける。海岸に近いところほど強風が吹き荒れるのだ。しっかりしろ、オレ。

 150号沿いのコンビニの店員に訊いたところ、この季節はいつも西風が強いが、今日は風が特にひどい日だという・・・。なんてこった・・・。いかなるルートを選ぼうとも、西に進む限りはこの向かい風からは逃れようがない。だんだん頭の中がからっぽになっていく。

 やがて天竜川を渡るが、だいぶ日が西に傾いてきた。今日泊まる予定の浜名湖ユースホステルまでは30kmほど残っている。残り30km。いつもなら、もうそろそろ今日も走るの終わりか、という気持ちになるのに、今日に限っては30km進むのにいったい何時間かかるか分かったもんじゃないぞ?

 ふうふう言いながら西へ西へ。ちくしょう、箱根を越えたときよりもつらいぞ・・・。しかも、昨日に引き続き、70kmを超えたところで左ヒザが痛くなる。

 そしてとっぷりと日の暮れた午後6時、ようやく浜名湖の弁天島前にたどり着いた。しかし、まだまだ宿は先にある。浜名湖ユースは市街地から離れた山の中にあった。街灯もなく、道は曲がりくねっている。地元の人に何度も道を訊きつつ、ようやく夜7時過ぎに宿に到着した。宿の明かりを見つけたときは心の底からホッとした。

 しかし、当然ながら、夕飯はなし!荷物を下ろすと、自転車のキャリアが外れかかっているのに気づいた。なんてこった。ネジを外し、キャリアの部品を組みなおし、再び取り付ける。簡単な作業だが、疲れきっている中ではこれでもさらにクタクタ。オレは決してタフガイではないのである。

 ヘトヘトオーラを漂わせながら、自分の部屋に転がり込み、メーターをチェック。この日の休憩時間を含めた平均速度は、なんと時速9.9km!道はこの日はほとんど平坦だったにもかかわらず、このありさまかよ。

<宿にて>

  団体の学生40人が泊まっているとかで、館内は騒々しかった。
  僕はユースに泊まる団体客というのはあまり好きではない。団体は他のホステラーと交わることは決してないし、あまりに人数が多いと、宿全体の雰囲気がその団体の雰囲気で占められてしまうからだ。まあ、学生が合宿をするなどといったときに、ユースの低価格は助かるんだろうけれど…。

 僕が自分の部屋に入ると、すでに先客がいた。彼は団体客の一員ではなく、一人で神奈川からやってきたという高校卒業を間近に控えたT君。大学受験に失敗し、4月からの浪人生活がすでに決定しているという。そして今は卒業旅行中。

 そして浜名湖に来るまでの道中、彼は途中で飛び込みでいちご農家に押しかけ、住み込みで働かせてもらっていたという。国道150号沿いのいちご農園というから、僕が前日に走ったあたりじゃないか。いちご農家で働き、いくらかのお金をもらい、今こうして旅をしているのだと話していた。ちなみに農家のご主人から、しきりに「うちにムコに来い」と誘われたらしい。ははは。
 しかしこういう人って、本当にいるんだなあ。これだからユース宿泊はやめらんない。ふだん普通に暮らしていたら、まず出会わないような人たちがいるからねぇ。

 夕飯は宿に荷物を置いてから、外に食べに行こうと思っていたが、もう動くのもしんどいくらいに疲れていた。ユース自体が山の中にあって食事を取れる場所までが遠いということもあり、今夜は、非常食として持っていた「カロリーメイト」で我慢することにした。はら、へるよ・・・。

 話し相手のT君がいなかったら、きっと孤独死していたにちがいない。

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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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