3月3日:キミは、登りきることができるか。

走行距離:100km
ルート :世田谷〜厚木〜小田原〜箱根
宿 泊 :箱根レイクヴィラユースホステル


 いよいよ大遠征の開始かあぁ。本当に今日から始まるんだなあ・・・まだ走っていてもいないのに感慨もひとしお。初日は箱根を登りきるのが目標。すでに箱根・芦ノ湖近くのユースホステルは予約済み。ふもとの箱根湯本まではすでに2年以上前にママチャリで到達しているので、そこから先、箱根登りがどんなものか楽しみだ。

 軽く朝飯を食べ、家を7時半に出発。環八通りを南下し、国道246号に入る。246号は昨年の11月に御殿場に行ったときも偵察がてら走った道。市街地の中を自動車が通り抜ける、面白くもなんともない道だ。自動車の排気ガスと騒音とプレッシャーにひたすら耐えるのみよ。

 やがて厚木に入り、ここから246号を南にそれて、国道271号(小田原厚木道路)に入る。自動車専用の有料道路の脇に側道があり、ここは自転車で走れるのだ。しかし路肩があまり広くないので、横を通り過ぎる自動車がオソロシイ。平塚に入ってしばらく走ったところで、海沿いの国道1号に出るために、地方道63号を使って南下。さほどきついアップダウンもなく、順調に走り続ける。お昼ごろ、夕方までに宿にたどりつけるメドがたったので、ユースに電話を入れて夕食も作ってもらえるようお願いする。うーむ、もしかして今日は本当にヨユーかも?(甘かった)

 大磯で国道1号に合流し、小田原城の傍を通ったのが午後1時半。小田原城自体は以前ママチャリで訪れたことがあるので今回はパス。目の前の箱根登坂に集中する。事前に聞いたユースのペアレントさんの話だと、小田原からユースまで、自転車で早い人で3時間、普通の人で4時間かかるとのことだった。果たして自分はどれぐらいで着けるだろう?

 そして、いよいよ箱根を登坂開始!湯本までは国道1号だが、そこから先、今回僕が選んだのは旧東海道である。大学時代に自転車部に入っていた友人が、「旧道のほうが坂はキツイけれど車は少ないし、自転車部が練習に使うのは旧道のほう」と言っていたのだ。距離も国道1号を登るより短いし、何より車が少ないというのはありがたい話だ。
 ただ、ユースのペアレントさんが「旧道は坂がキツイから、自転車をこぐのはほとんど無理」と言っていたのが気にはなったけれど、、、。なーに、僕はあの日光の「いろは坂」をも登った経験の持ち主。

 と思っていたら、なんちゅー勾配なんだっ!信じらんねえ。ペダルが踏めないぞ!?初日から無念の手押し。自転車を降りて、トボトボと自転車を押して歩く。勾配が緩やかになったら再びこぎはじめる。この繰り返し。

 途中で空腹になったので(そういえば、昼間は時間を惜しんでコンビニで買い食いしかしていなかった)、箱根の一里塚近くの茶屋で、月見うどんと味噌田楽を食べる。そして茶屋で雑談をしていた地元の男3人連れに、この先の道のことを訊いてみる。
「この先も登りはキツイんですか?」
「そりゃーおめー、こっから先がキツイんじゃねーかよ」(げ・・・まじで?)
「ここまでなんか、たいした登りじゃなかっただろーがよ?」(まじかよ?)
「この先『七曲がり』っていうのがあって、そこがしんどいぞー!」(まじかよ?)
「国道1号に比べて距離が短いたって、そんだけ坂が急なわけだから、1号登るのとそんなに時間は変わんねーぞ」

 男3人にさんざん脅され、そして励まされ、店を後にした。茶屋の近くの一里塚で写真を撮り、登坂再開。ほどなく、問題の七曲がりにさしかかった。ぬ、すさまじい勾配、そしてヘアピンカーブ〜!勾配も、ヘアピンカーブのヘアピン具合も、いろは坂をしのぐ。ギアを軽くしても、ペダルが踏めない。踏める程度にまでギアを軽くして出せるスピードは…メーターを見ると…時速6km??歩くのと変わらないじゃないか。

 途中、通り過ぎる自動車から「頑張ってくださぁい!」との声援を受け、いちおう笑顔で応えはするものの、手押しをしている真っ最中なので恥ずかしいことこの上ない(チャリダーの皆さん、分かるでしょう?)。

 けっきょく、七曲がりのうち二曲がりほどしかペダルを踏めなかった。双子山近くの「甘酒茶屋」を過ぎるといくぶんかラクにはなったものの、ペースはがた落ちだ。そして、あたりが薄暗くなってきた午後5時前、ようやく登坂を終えた。小田原を出発して実に3時間半が過ぎたことになる。眼下の芦ノ湖もあまり目に入らない。疲労困憊、くたくたである。どうにか登りきりはしたものの、とても「制覇した」などと言えるような心境ではない。・・・納得がいかん!

<宿にて>

 よろよろになって箱根レイクヴィラユースにチェックイン。着くなりペアレントさんから「かなりお疲れですね」と言われる。もろに疲れが顔に出ていたらしい。「はぁ、もうクタクタです・・・」荷を解いたものの、何をする元気もなく、ベッドの上で動けなくなった。
 やがて夕飯の時間だ。府中の自転車を愛好する中年夫妻、電力会社に勤めるWさん、一人旅50代おじさんと大いに盛り上がる。・・・ご夫妻と50代おじさんから、「今、高校何年生なの?」と訊かれた。おいおいおい、もう23歳の大学卒だぞ僕は。

 僕が自転車で来ているということもあって、自転車話で盛り上がった。特に府中のご夫妻は普段から自転車を愛用しているといい、だんなさんは会社勤めではあるけれど、自動車免許を取っていないという。おお、免許なし、僕と同じではないか。

「だいたい自動車ばかり増やすから日本の社会がおかしくなったんだよ」(そうだっ)
「だから東京も自転車道とか整備しなきゃダメだな。石原知事に頑張ってもらわないと」(そうだっ、そうだっ)
「オレは会社勤めだけれど、自動車免許なくてもやってこれたよ」(お、実際可能なんだ?)
「毎日多摩川の土手のサイクリングロード走って通勤しているよ」(素晴らしいっ)

 僕も自動車免許を持っていない。わざと取らないのである。みんながみんな気軽に自動車に乗るから東京の道路は大渋滞になるんじゃないか?都会なら公共交通機関と自転車だけで十分だ。・・・こういうポリシーは、果たしていつまで貫き通すことが出来るだろうか?

 さて、この日泊まった箱根レイクヴィラユースは、さすが箱根、ユース内の風呂に温泉を使っており、24時間入り放題だという。素晴らしいっ。今日の登坂疲れを取るのにはぴったりだ。やっぱりさー、おなか一杯食べられて、広い風呂に入れたら、あとはもう何もいりまへーん。極楽ごくらく。

 風呂に入った後、同室の電力会社Wさんと、役所業界についていろいろと話す。さすがにWさんは仕事柄いろいろな役所に出入りするだけあって、役所気質というものに詳しい。僕が4月から勤める市役所は、果たしてどのような風土であろうか?
 談話室にも行ってみたけれど、もうみんな部屋で休んでいるようだった。

 クタクタに疲れているため、夜も早い。10時過ぎには寝てしまった。


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日付
タイトル
走行距離
宿泊
まえがき
ついに、このときが。
3月3日 キミは、登りきることができるか。 100km 箱根レイクヴィラユースホステル
3月4日 土砂降りの雨、一車線の人生。 106km 焼津セントラルホテル
3月5日 東海道しっかりせよ、怒り号。 100km 浜名湖ユースホステル
3月6日 一筋に、一筋に、無敵の男。 95km 愛知県青年会館ユースホステル
3月7日 天からミゾレの関が原。 110km 近江八幡ユースホステル
3月8日 転勤族の故郷とは。 83km 実家
3月9日 作戦変更。 実家
3月10日 父子伴走。 71km ビジネスホテルともえ
3月11日 瀬戸内旅情で休んだ。 82km ユースホステル浄運寺
3月12日 口角泡を飛ばした夜。 93km 倉敷ユースホステル
3月13日 決断のとき。 94km 瀬戸田ユースホステル
3月14日 春のうららの海だわさ。 89km 松山ユースホステル
3月15日 九州上陸作戦。 35km 別府ユースホステル
3月16日
神が舞い降りた日。
126km
シティホテルプラザ延岡
3月17日 ひとり上手と呼ばないで。 88km 宮崎県婦人会館ユースホステル
3月18日 ダサいキツネと依怙地のタヌキ。 59km 都城ユースホステル
3月19日 桜島だ、いよいよ。 69km 桜島ユースホステル
3月20日 ずっこけるな、三人組の大競争。 49km 圭屋(たまや)ユースホステル
3月21日 佐多岬はるかなり。 22km 錦江湾サウスロードユースホステル
3月22日 決戦、あばよ、早くー。 58km JR志布志駅待合室
3月23日 さらば、さらば。 1km 大島汽船「ありあけ」2等席
3月24日
日常へ。
34km
あとがき オレの勲章はオレのもの。


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