12.組織人とチャリダー

「市役所を退職します」


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 大学卒業後、1年間のフリーター生活を経て、市役所に就職した。公務員として、何事か成さん!と燃えに燃えて入庁したものである。市役所の中にあって気を吐き続け、エースたらんことを目指し、いろいろな役職にもついたし、昇給も同期より早い。役所を変えることを期待されているのなら、その期待に応えてやろう!と意気込んでいた。

 就職後も自転車旅行を続けていることは旅行記をご覧いただければお分かりのとおり。そして、旅行先で出会うプータローを見ては、「フン、ロクに仕事もせんくせに、旅行に逃げやがって」と心の中でバカにしていた。・・・それが、まさか3年で自分自身も退職することになろうとは・・・。

 残念ながら、民間企業、公務員を問わず、改革者はほんの一部しかいない。しかも自分が改革者たらんとすればするほど、周りの人間は余計につけあがってサボりはじめるのだ。どーせ全部、あいつが何とかしてくれるだろう、と。

 管理職は仕事の委任と仕事の放棄を勘違いし、丸投げをして自分は知らんふり。現場にも興味がない。一般係員は一般係員で我が身がいちばんかわいいもんだからダンマリを決め込む。どうせ何も変わらないし、しらねー、と。

 およそ組織に所属する者は、大きく分ければ以下の3類型のいずれかに所属する。

イ)周りの環境がどのようなものであれ、揺るぎない信念をもって常に改革者であり続ける(職業人)
ロ)仕事は生活のため、小遣い稼ぎのためと割り切って折り合いをつけるが、最低限の義務以上のことはやる(オトナ)
ハ)仕事は生活のため、小遣い稼ぎのためと居直って、他人を利用してラクをし、自分はなるべくサボりながら給料はしっかりいただく(鬼畜)


 オレは毎日ちゃーんと会社に行って、家族を食わせてやってんだぁー!と言う連中でも、実際はロ)やハ)程度ではないだろうか。ロ)は当たり前。威張るほどのものではない。ハ)となれば論外である。ムダに年を食うというのは、ハ)のような連中をいうのだ。

 イ)のような職業人がいたとき、自分も退路を断ち、イ)となって助けようという人はどれほどいるというのだろうか。民間企業だろうと公務員だろうと、そんな人はまずいない。それどころか、イ)のような職業人を発見したとたん、「ああ、これで自分の尻ぬぐいをしてもらえる」とダラしなくなる連中が大半ではないか。

 イ)の職業人だって、こんなので面白いわけがなかろう。自分が力を尽くせば尽くすほど、事態は余計に悪化するのだから。こうして改革派だった職業人は、各地で各個撃破されていき、組織の体質が変わることもない。また次の犠牲者を出すだけである。

 組織の中にとどまってイ)であり続けるのは、大変なことなのだ。そういう連中は組織の中には必要だが(特に役所には)、本人がそれで幸せかどうかは別問題である。

 組織の中でイ)のような職業人でいることに意義を見いだせなくなり、ロ)のようなオトナになることもできず、ハ)のような鬼畜に転落することも自分で許せない。こうなればもはや組織を飛び出すほかないのだ。

 とはいえ、仕事をしない趣味人のまま生きていけるのかというと、そういうわけでもない。毎日遊び暮らして本当に楽しいか?世捨て人か、仙人か、遊び人か知らないが、仕事での満足と人生の充実度は密接にからんでいるのだという考えに、変わりはない。組織人をやめたからといって、職業人までもやめたわけではないのである。

 かくしてチャリダーは組織を飛び出し、一人でペダルをこぎ出し、峠に向かって走り去ってしまった。パラダイスに向かっているのか、地獄へ向かっているのか、それは数十年後に分かるであろう。峠の先に何が待っているかは、今は誰にも分からない。だからといって、先が見えないこと自体は峠を目指さない理由にはならないのである・・・。

13.英雄ママチャリダー
11.自転車旅行を伝える力
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