06.自転車旅行はスゴくてエラいか?

「えー!自転車〜!?スゴいねー!!」


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 自転車旅行中、ユースホステルに泊まったときに「自転車で来た」と言うと「おお、すごーい!」と驚かれます。ふだんの日常会話でも「趣味は自転車旅行です」「いちばん遠い所で鹿児島まで行きました」と言うと、これまた「えー!!すごーい!」なんて言われます。

 いや、本当に自転車旅行に出かけるなんて、われながらスゴいと思いますよ。自分の力だけで、動力を使わずに何百kmも走ったりするわけだから。まさにヒーロー、僕ってスゴい!エラい!みんな、マネできねーだろーが!これはまさに俺たちだけの世界だもんネ、ふふふん。まったくこんなにつらくて苦しい旅、われながらよくやるよ。みんな、こんなに頑張っている僕のことを、応援してね!

 はい、以上は全部自分だけの独りよがりな思い込みですね。ユースに泊まったときは他の人も旅人だから、素直に「すごーい!」と共感を呼びますが、日常生活の中で「すごーい!」と言ってくれる人は、たいていの場合
「すごーい、ヘンタイ」
「すごーい、ヒマだねー」
「すごーい、あほ」
「すごーい、時間の無駄 」

という意味で言ってくれているんだと思います。

 苦しい道のりを走っていると、こんなに自分は苦労しているんだから、それなりの酬いがあってしかるべきなんて思いがちですが(現に僕は思っています)、世間標準の見方からすれば、自転車旅行はただのヘンタイな趣味でしかないのです。スゴくてエラいという評価が通用するのは自転車旅行者や貧乏旅行者の中でだけであり、周りから見たら「なんかヒマなことやっとるわ」てなもんです。

 僕は麻雀が好きで、学生の頃はよくサークル内で打ったり、雀荘に入り浸ったりもしてました。麻雀は、思考力、ひらめき、運、演技力などが要求される知的娯楽だ、などと言ってみたところで、麻雀をやらない人からすれば「ただのギャンブル」 でしかないわけです。

 自転車旅行も同じようなものだと思うんです。旅行先での地元の人々との触れ合いだとか、美しい風景だとか、自分の限界に挑戦だとか言っても、ぜーんぶ自己完結的なキーワードでしかないのです。

 自転車旅行をする以上、周りから理解されない、もしくは「何か変わったヒト」扱いされるであろうことは、覚悟しておかねばなりません。それでもわれわれチャリダーは、他人からは見えない、自分のためだけの勲章を拾い集めるために、野を駆け山をめぐるのでした。孤独なチャリダーどもに、幸あれ。


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